七代目
濱村 洋平
酒は変えるが、
伝統は変えない。
平成二十七年より、広島市可部の蔵「旭鳳酒造」の七代目を務めております、濱村洋平と申します。
慶応元年、一八六五年の創業から数えて七代目。太田川と根の谷川、二つの水系に恵まれたこの土地で、江戸時代から続く伝統を守りながら、新しい挑戦を続けています。

父の死と、母の言葉
小さい頃から、蔵の主になることは何の不思議もなく分かっていました。大学を卒業してすぐに旭鳳酒造へ入りましたが、蔵元になる日は、遠くの雲を見るようにぼんやりと見えているだけでした。
その雲が、突然目の前に降りてきました。父の死は、あまりに唐突でした。
まだ試行錯誤どころではありませんでした。何をどうすればいいのか分からずにいた私に、母が言いました。
「父の死は洋平の始まりだから、父が思い切ってやったように、あなたはあなたの酒を造りなさい」
その言葉が、どこから湧くとも知れない自信を、確信にまで導いてくれました。
酒は変えるが、伝統は変えない
私が選んだのは、変わることではなく、変えることでした。遠くに見えるものを目標にしている時間はありませんでした。
酒は変えるが、伝統は変えない。
その冬、蔵には私のほかに誰もいませんでした。朝五時に目を覚ますと、足は自然に蔵へ向かっていました。可部の冬は、とにかく寒い。白い息を度数計に吹きかけ、茶色くなった軍手でこすって、かすかに示された数字を確認する。そこでようやく、目が覚めた気がしたものです。
二十日間、待ち望んだ酒がバルブからこぼれてきました。味わってみて、満足のいくものでした。振り返ると、嬉しそうな母がそこに立っていました。
こうして生まれたのが、「泰平」です。
これから
泰平のラベルには、「BRIDGE OF THE PAST TO THE FUTURE」という言葉を入れています。過去から未来への橋。百六十年受け継いできたものを、次へ渡していくための酒です。
蔵に足をお運びいただければ、私がご案内いたします。人と人をつなぐ日本酒を、これからも造ってまいります。
この物語から生まれた酒
七代目がひとりで迎えた冬に生まれた「泰平」。広島県産八反錦を使った純米吟醸です。